B それ以外の教科
2018.08.13
唐突で申し訳ありませんが、東大などの一流国立大学、特に理工系学部に帰国子女などのバイリンガルの生徒はどのくらいいるのでしょうか?残念ながらデータがないのですが、これまで直接あるいは間接的に見聞きした限りではほとんどいないと思うのです。
とにかく、そういう事例を聞いたことがありません。早稲田、慶応、上智の文系学部にはバイリンガルの生徒がたくさんいるはずです。知り合いのお子さんだけでも5人これらの学校に行きました。これらのお子さんは英語が抜群に出来るので、英語の配点が高い私立大文系学部への入学は普通の生徒に比べると圧倒的に有利です。
極端な言い方をすれば、いわゆる偏差値の高い一流大学であっても、私立文系なら、英語が出来れば入れるということです。ところが同じ大学であっても理系となると、英語だけでは入れませんし、ましてや国立大となると、全教科出来なくてはならないので、英語は得意という生徒はほぼ壊滅状態ではないかと思います。
何が言いたいかと言うと、バイリンガルで育つとそうでない生徒に比べて他の教科の学力が伸びにくいのではないかということです。今言ったように、国立大あるいは私大の理工系学部にバイリンガルの子が少ないのを見れば、そう思わざるをえません。
誤解を覚悟で敢えて申し上げますが、理工系学部の生徒のほうが文系学部の生徒よりも日本の経済、国力にとって重要であるという考えは、日本が科学技術で食べている国であるという現実を冷徹に見れば、決して間違ったものではないと思われます。
そうすると、多くの国民が望んでいるとされる、小学校英語教育の必修化(= バイリンガル教育)がもたらすものは、わが国の科学技術力の大幅な低下、そこから必然的に生じる経済力、国力の低下ではないのでしょうか?現在、生徒の理工系離れが非常に深刻で大学の理工系学部への志願者が激減しているそうです。科学技術立国である日本の土台が今崩れつつあるのです。
そういう状況でバイリンガル教育を導入すれば、いったいどうなるか、想像しただけで恐ろしくなります。理数離れを食い止めるために、もっと実験を増やしたりして、これらの学問の楽しさを生徒に知ってもらわなくてはいけません。英語なんか教えている場合ではないのです。
ここでバイリンガル教育の失敗実例を少々
バイリンガル教育に関する興味深い番組の内容を2つご紹介します。一つは最近見た民放番組です。静岡県にある小学校から高校までの一貫校を取り上げていました。そこではimmersion(英語漬け)教育、すなわち国語と社会科以外の授業はすべて英語で行われます。確かに生徒は英語が上手のようです。しかし、問題は進学実績です。進学先として、海外の大学の名前が多く出てきますが、それが生徒の将来にプラスなのでしょうか?海外の一流大学ならわかります。でも、そうでなければ、国内の一流大学へ進学したほうが生徒にとっていいのではないかと思うのです。
実際、その学校では小学校から最後(高校)まで通い続けるのは半分だそうです。その理由は「英語では他教科の授業の速度が遅くなってしまう」ということでした。つまり、あくまでも日本人の生徒に、英語で数学などを教えると一日に3ページ(例えばです)しか進めないのだそうです。日本語でなら6ページ進めても。これでは(英語は得意になっても)他の教科の学力が伸びにくいのは説明するまでもないでしょう。このことを生徒の親御さんはだんだんわかってきて、国内の難関大学への進学を考える親御さんは子供を普通の日本の学校へ転校させるということでした。